ノアが950年生きたことで解るように、洪水までの人類は驚くべき長寿を祝福されていました。アダム創造からノアの死までの約二千年間祝福されていた長寿が、洪水後急激に短命になりました。洪水を生き延びたノアの子セムは600歳で死に、洪水の約290年後に誕生したアブラハムは175歳、約520年後に生まれたアブラハムのひ孫のヨセフは110歳で死んでいます。

さて、何故このように急激に寿命が短くなったのでしょう。聖書には「何故」に対する解答は殆ど与えられていません。聖書は淡々と事実を記載しているだけのようにも読み取れます。聖書から考察できることに関しては、後に記載することにして、質問にだけまず簡単にお答えしたいと思います。

noah_7_1 完璧な状態で創造された地球環境がどのようであったかは解りませんが、考えられていることを簡単に紹介します。主は地上で人が快適に住めるように(イザヤ書45:18)、すべてのものを整えられました。有害な宇宙線や紫外線、太陽風の嵐が果たして初めから地球に向かって攻撃していたのかどうかは解りませんが、少なくとも現在はそうであり、地上に住む生命を保護するために備えられたと考えられます。

地球は大きな強い磁石であることはよく知られていることですが、これが地球を護っています。また、地球を取り巻くオゾン層も地上の生命を護っていますが、昨今このオゾン層に穴があいてガンの発生率が上がっていると問題になっています。さて、よく分からないのが上の水、かつては「天蓋」と呼ばれていたものです。

「神は大空を造り、大空の下の水と、大空の上の水とを区別された。そのようになった。(創世記1章7節)」

創造のときに主が水を「下の水」と「上の水」の上下に分けられたことは明確に書かれていますからその通りです。下の水は海であり、このことに疑問の余地はないでしょう。ただ、上の水に関していくつかの意見があり、まだ解っていません。水蒸気すなわち目に見えない気体であるという説があり、その水蒸気が厚い層になって地球を護っていたと説明されていました。そして、その天蓋がノアの洪水の時にすべて雨となって地上に降り注いだのだと考えられていました。しかし、この層は当初考えられていたような厚いものではなく、ノアの洪水の時の全体的な雨量を説明できるものではないということが明らかにされました。

厚い層ではなかったと考え始めたことと、宇宙の始まりに関する新しい説にのっとって、一挙に水蒸気の層という考えを否定してしまった人々もいます。しかし、層の厚さの問題であったと考えた方が、その他の現象を理解し易いのではないかと思われます。層の厚さがどのくらいであったかは別として、その「天蓋」が洪水の時に一挙に降り注いで、地球を護る一つの要因が完全になくなったと考えられます。

「ノアの生涯の六百年目の第二の月の十七日、その日に、巨大な大いなる水の源が、ことごとく張り裂け、天の水門が開かれた。そして、大雨は、四十日四十夜、地の上に降った。(創世記7章11, 12節)」

大空で何が起こったかはいっさい不明ですが、もしかしたらこの洪水の裁きと同期して、主は有害な放射線、宇宙線、紫外線を空中で解き放たれたのかも知れません。そしてまた、「天の水門が開かれ」天蓋が完全になくなり、そのためにオゾン層にも傷が付き始めたであろうことは容易に想像できます。そして、地上に放射線、宇宙線が降り注がれるようになったでしょう。また、「水の源が、ことごとく張り裂け」、言うなら地中深く「引っ掻き回され、ひっくり返され」たので、地球環境の悪化が地上のいのちに及ぼす影響は計り知れないものがあったと思われます。次の質問に関連しますが、氷河時代はその代表的なものだろうと思われます。このような複合的な要因によって、寿命が急激に短くなったのだと考えられます。

 

***** 詳細は下記 *****

 

noah_7_3 アダムから始まる人類の寿命を整理しますと、アダムから十代目のノアに至るまでの人類は、実に900年以上の長寿を祝福されていました。赤の破線で示しているのが、ノアの洪水が起こった時です。アダムから始まった人類史がノアの時代に手渡されるまでの家長たちの「生まれて、生きて、死んだ」という記録は、創世記5章にまとめて書かれています。5章は彼らの生きた記録ではなく、むしろ死の記録になっています。唯一の例外は、図に星印で示している神の人エノクです。彼は死にませんでした。
「エノクの一生は三百六十五年であった。エノクは神とともに歩んだ。神が彼を取られたので、彼はいなくなった。(創世記5章23,24節)」

家長たちの寿命の変遷の図で、エノクは神と共に歩み、死ななかったので、敢えて線でつなぎませんでした。アダムは930年、ノアは950年、ノアの祖父メトシェラは969年の長寿を全うして洪水の直前に死んでいます。ノアの父はやや短命で777年です。洪水があって一挙に寿命が短くなり、アブラハムは175歳で死んでいますが、その時には充分年寄りであったと考えられます。ちなみに女性に関する記述は聖書では残念ながら極端に少ないのですが、例外的にサラについては詳しく書かれており、そして寿命はアブラハムよりはるかに短く127歳で死んでいます(創世記23:1)。アブラハムの孫ヤコブは147歳で死に(創世記47:28)、彼の愛してやまなかったラケルは、ベニヤミンを生む時に死んでいるので年齢は解りませんが、しかし非常に若くして死んだことになります(創世記35:18, 19)

家長たちだけがこのように祝福されて長寿を与えられていて、当時の一般的な人々の寿命はこんなに長くはなかったと考える人々もいないではありませんが、聖書に書かれていないことに関して、余りに空想を逞しくすることは好ましくないであろうと思います。

洪水後、寿命が急激に短くなったことに関して、聖書は、「何故」という疑問に解答を与えてはいません。しかし、敢えて聖書に答えを求めるならば、最初のアダムの罪によって「死」が入り、主との断絶による霊の死は同時に肉体の死をもたらしました。ですから、アダムもその子孫もすべて死ぬことになったのでした。

「しかし、善悪の知識の木からは取って食べてはならない。それを取って食べるとき、あなたは必ず死ぬ。」
「あなたは、顔に汗を流して糧を得、ついに、あなたは土に帰る。あなたはそこから取られたのだから。あなたはちりだから、ちりに帰らなければならない。(創世記2章17節、3章19節)」

そして、主から断絶された人類は、自ら滅びの道を選んで歩み続け、地上は悪で蹂躙されてしまったので、遂にノアの大洪水によって裁きが下されたのです。

「【主】は、地上に人の悪が増大し、その心に計ることがみな、いつも悪いことだけに傾くのをご覧になった。それで【主】は、地上に人を造ったことを悔やみ、心を痛められた。そして【主】は仰せられた。「わたしが創造した人を地の面から消し去ろう。人をはじめ、家畜やはうもの、空の鳥に至るまで。わたしは、これらを造ったことを残念に思うからだ。」(創世記6章5~7節)」

実は、アダムが罪を犯した時に、罪に対する裁き・呪いは最初から被造物全体に及んだことが聖書に書かれています。

「また、人に仰せられた。「あなたが、妻の声に聞き従い、食べてはならないとわたしが命じておいた木から食べたので、土地は、あなたのゆえにのろわれてしまった。(創世記3章17節)」

ですから、初めから、宇宙も地球も人の罪の故に呪いの中に置かれたのであり、寿命が短くなったのも、その出来事の一つではあったのです。

「私たちの齢は七十年。健やかであっても八十年。しかも、その誇りとするところは労苦とわざわいです。それは早く過ぎ去り、私たちも飛び去るのです。(詩篇90篇10節)」